1. 液体の蒸気圧 |
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「蒸留は液体の示す蒸気圧の差を用いて混合物から目的の成分を分離する操作である。」と言われますが、蒸気圧とは何でしょうか? 我々の身近でこれを体験することができます。コップに水を入れて2−3日置いておきますと水は無くなってしまいますね。これは水が蒸発したからです。では何故水は蒸発するのでしょう。それは水の分子が絶えず運動していて水の表面から空気中に飛び出るからです。水の分子が絶えず運動しているのは周りからエネルギーを貰っているからなのです。 コップに蓋を付けて置くとどうなるでしょう? 水は空間に飛び出してくるのですが、行き場が無くて空間の中で飛び回っています。このとき、蓋に衝突しますよね。衝突するときに蓋に「力」を与えます。この力が水の蒸気の「圧力」なのです。これを「蒸気圧」と言うのです。 ところで、水の代わりにアルコールをコップに入れて置くとどうでしょうか? 水を入れた場合より先に無くなります。これは、アルコールの方が水より活発に運動しているからなのです。ですからアルコールをコップの中に閉じこめた場合、蓋に衝突する時の「力」は水より強いのです。すなわちアルコールの方が水より「蒸気圧が大きい」と言うわけです。水とアルコールの蒸気圧に「差」があるのです。 ですから、アルコールと水を混ぜてコップに入れておくと,アルコールの方が先に余計蒸発します。蒸発したものを調べますとコップに入れたときのアルコールの濃度より高くなっています。この性質を使えば、元の濃度より高い濃度のアルコールが得られます。これが蒸留の原理の基本です。蒸留の原理は先に行って詳しく説明しますが、ここでは蒸気圧の差が問題であること、すなわち、物質の蒸気圧が重要であると言うことを理解して頂きたいのです。 「常圧付近の蒸気圧の表示式としてもっともよく用いられているのは、アントワン(Antoine)式である。」につき説明を加えます。 蒸気圧を表す式として、一般に知られているのはクラジウス−クラペイロンの式です。この式は理想気体の法則、蒸発潜熱が温度で変化しないおよび液体の容積は気体の容積に比較して無視できると言う仮定によって得られた式です。理想気体の法則に従うと言う点と液体の容積は気体の容積に比較して無視できると言う点の二つは宜しいのですが、蒸発潜熱は温度で変化しないと言う点は受けいれがたいのです。たしかに常圧付近では蒸発潜熱はそれほど温度が変わっても変化しないのですが、温度が高くなると急激に減少してきて、ついに臨界温度ではゼロになってしまいます。この蒸発潜熱の温度変化を加味して導かれたのがアントワン式と言う訳です。この式は別に新しい式ではなく100年以上前に提案された式ですが、コンピュータの普及により広く使われるようになりました。化学工学の分野では蒸気圧式と言えばアントワン式と言われる位に広く使われています。 ところで、多くの物質が蒸留により分離精製されます。したがって、蒸留対象となる物質の蒸気圧を知る必要が出て来ます。蒸気圧を知るとは、様々な温度の時の蒸気圧を求めることができると言うことになります。すなわち、様々な物質の蒸気圧データを求める必要があります。それは、蒸気圧式の定数を知ると言うことに置き換わります。如何に多くの物質の蒸気圧式定数をそろえて置くかと言うことが必要なのです。例えば、化学物質の性質を揃えた便覧として「化学便覧」がありますが、そこに収録されている物質の数は5−600程度です。一般の用途には十分な物質数と言えますが、本格的に蒸留する場合には不足しています。そこで、自分で蒸気圧式の定数を決めることが出来る必要がでてきます。 |
蒸留・蒸気圧・気液平衡・物性推算 化学工学で必要な物性データとプログラム |
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物質の沸点 主要な600物質の沸点を掲載しています |
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臨界点 主要600物質の臨界温度,圧力,容積 |
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気体密度 理想気体の密度を計算 |
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高圧気体密度 高圧気体の密度をSRK状態方程式により計算 |
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蒸気圧の計算 主要な100物質の蒸気圧を計算 |
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気液平衡計算1 代表的な系の計算 |
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気液平衡計算2 一般的な系を非理想溶液として計算 |
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マッケーブ・シール法1理想溶液の理論段数を計算 |
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マッケーブ・シール法2非理想溶液の理論段数を計算 |
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