南海日日新聞 平成25年4月3日(水)

 

奄美の黒糖が支えに 薩英戦争の軍資金


大江氏が講演

【東京支社】 文化の多様性への理解を目指すNPO法人・ちきゅう市民クラブ(本部・東京都板橋区)の3月定例会が26日、飯田橋セントラルプラザであり、龍郷町出身の東京理科大教授、大江修造さん(74)が最近の″新史実″を交えながら「明治維新のカギは奄美の砂糖にあり」のテーマで講演した。

 大江さんは講演でまず「世の中、歴史がきちっと伝わっていないことが多い」と切り出し、「生麦事件から薩英戦争に突入したが、戦争は戦死者の数からみても薩摩側の勝利。英国はその薩摩の実力を認めたが上にその後、薩摩を応援するようになった。例えば、「明治維新は篤姫が西郷に依頼し、無血で江戸城明け渡したということになっているが、本当はハリー・パークス英国公使による助言が大きい」と述べた。

 また、「物事をなすには経済の支えが必要。薩英戦争の軍資金は奄美の黒糖によってもたらされた。薩摩が黒糖によって得た収入は240万両。これにより大砲、軍艦、集成館(自前の軍需工場)などを装備し、戦争を勝利に導いた」と持論を展開した。

 薩摩藩による砂糖増産政策では@通貨の禁止A稲作の禁止B造船の禁止C奴隷制度−などを行った結果、砂糖の生産量は幕末の17年間に600万斤(1851年、嘉永4年)から1100万斤(1868年、明治元年)に倍増した。

 薩摩藩は奄美を間接支配(島役人、郷士格の取り立て)という特徴的な体制に組み込んだ。例として、大江さんの母方の田畑家の祖先が@藩命により国分新田の開発を見学、秘伝(技術)を持ち帰った(大江さんは先ごろ、国分新田を視察)A耕土拡大のために浦の橋立(享保年間の難工事)を田畑家が造ったーことなどを述べた。

大江さんは蒸留工学の世界的権威者だが,「きちっとした史実を世の中に広げていくことも自身の使命」と締めくくった.

講演者の関連書籍:

大江修造「明治維新のカギは奄美の砂糖にあり」

アスキー新書 143,ISBN978-4-04-868410-1 定価724円